動物園のライオンにときどき獲物を「丸ごと」与えたら、野生のような「食べて寝る」リズムに近づくのだろうか。アデレード大学と南オーストラリアのモナルト・サファリパーク(Monarto Safari Park)が成獣のオスのアフリカライオン3頭を3か月間追跡したところ、もともとの「飽食―絶食」スケジュールに9日ごとの丸ごとの死骸給餌を加えると、食事時間はほぼ3倍に延び、引き裂く・引っ張る・食べ物を操作するといった動作も明らかに増えた。満腹後に横になって休む時間が大きく増え、絶食期間の活動量はさらに上昇。野生の「feast-and-fast(ごちそうと断食)」のリズムにより近づいたという。

画像出典:Shutterstock(via ScienceDaily)
研究の筆頭著者はレシア・フリホレンコ氏。チームは赤外線カメラ8台で連続記録した。実験段階で与えた死骸は約200キロで、最長3日間置かれた。成果は学術誌『Applied Animal Behaviour Science』(2026年、301巻107041)に掲載され、ScienceDailyが2026年10月7日に紹介した。ポイントは「ライオンをもっと満腹にさせる」ことではなく、食べる過程そのものを、野生のように頭と体を使うものにすることだ。
引き裂く、引っ張る、操る 食事そのものが「環境エンリッチメント」
大事なのは「長く食べる」ことだけではない。ライオンは野生と同じように獲物を丸ごと処理しなければならず、引き裂き、引っ張り、体勢を変える。こうした行動自体が環境エンリッチメントであり、毎日カット済みの肉をもらうよりずっと「仕事」が多い。ぐるぐると歩き回る常同行動はやや増えたものの、空腹そのものより飼育員の予測可能なルーティンと関連することが多かった。攻撃性や社会的な干渉は増えておらず、これは群れで飼育する際の管理にとって重要なポイントだ。
動物園にとって給餌の設計は、衛生、安全、来園者からの見え方の板挟みになりがちだ。今回の研究は、丸ごとの給餌で食事時間が延び、操作行動が増えても目立った衝突は起きないという定量的な行動データを示した。科学的根拠のあるエンリッチメントの選択肢がひとつ増えたといえる。
たっぷり寝て、次のごちそうを待つ
サンプルは成獣のオス3頭のみだが、3か月間連続、赤外線カメラ8台という高密度の記録で、給餌方法によって行動リズムがどう組み替えられるかが十分に見て取れる。満腹後は爆睡し、絶食期にはまた活発になる。まるで野生動物のドキュメンタリーのようだ。ライオン舎の前で彼らがゆっくり「プレゼントを開けている」姿を見かけたら、それこそ研究が示す、ちょっぴり野性的な幸せな時間なのかもしれない。もちろん園ごとに条件は異なり、導入するかどうかは安全や法規に基づいて判断する必要がある。それでも、「ときどき丸ごと与える」ことで飼育下のライオンの日常が野生のリズムに近づくという、オーストラリアの現場からの実証がひとつ加わった。
来園者にとっても、園がときどき「丸ごとのごちそう」を出す理由を知っていれば、ライオンの食事の見え方が変わる。それは単なる給餌ショーではなく、本物のライオンとして生きる練習を手伝っているのかもしれない。
