想像してみてほしい。1億6,000万年以上前の中国・内モンゴルに、体長約40〜50センチ、体重約1〜2キロの「半水生」の小さな獣がいた。尾は平たく幅広でカワウソのよう、後ろ足の外側の指は長く、どこかカモノハシにも似ている。シカゴ大学のチームが主導した研究は、この動物を Megacauda sungei(「大きな尾」の意)と命名し、『Nature』誌に発表した。喉の舌骨が驚くほど完全な形で残っており、当時すでに食べ物を咀嚼して塊にして飲み込み、さらに幼体は乳を吸えた可能性があるという。「現代の哺乳類に近い食べ方」が、中期ジュラ紀の川辺まで前倒しされたことになる。

画像出典:University of Chicago News(life restoration)
メガカウダはドコドン類(docodont)と呼ばれる哺乳形類の仲間で、生息年代は中期ジュラ紀(約1億6,800万〜1億6,300万年前、報道では約1億6,500万年前とされることが多い)。同時代の仲間としては現時点で最大級だ。がっしりした犬歯と、切り裂くための頬歯を持ち、胃の内容物からは小型脊椎動物の細かな骨片も見つかっており、サンショウウオのような小動物を捕食していたと考えられている。幅広く平たい尾、長めの外側の後ろ足の指という半水生の体のつくりもあって、復元図ではいかにも「泳ぎが得意そう」に見える。
喉の骨はオポッサム似 咀嚼と授乳が早くも登場
研究の焦点は、保存されていた舌骨(喉)の構造だ。その形は現生のオポッサムなどと比較でき、「先に咀嚼してから塊を飲み込む」能力と、幼体が乳を吸う能力を裏づける。こうした能力はこれまで、もっと後の時代に現れたと考えられることが多かった。メガカウダはその時間軸を中期ジュラ紀までさらにさかのぼらせ、哺乳類の近縁グループがどのように一歩ずつ「現代的な食べ方」を身につけたのかを理解するうえで重要な手がかりとなる。論文はLi, Y.らによるもので、責任著者はシカゴ大学の羅哲西(ルオ・ジョーシー)氏。2026年10月7日に発表された。
シカゴ大学生物科学部門も公式の解説動画を公開しており、アニメーションでこの「カワウソ+カモノハシ」の姿や、喉の構造がなぜ重要なのかを紹介している。
動画出典:University of Chicago Biological Sciences Division/YouTube
半水生の暮らし 尾も指も「水をかく」ため
喉の発見だけでなく、体そのものも物語を語っている。平たく幅広い尾、長めの外側の後ろ足の指、そして捕食向きの歯。このジュラ紀の親戚は、カワウソのようでもあり、カモノハシっぽくもある。古生物ファンにとってメガカウダは「また新種が見つかった」というだけではない。咀嚼、嚥下、そして授乳の可能性をつなぐパズルのピースなのだ。次にカモノハシやカワウソのドキュメンタリーを見たら思い出してほしい。似たような体のアイデアは、中生代の川辺ですでに一度試されていたのかもしれない。
内モンゴルからシカゴの研究室、そしてYouTubeの解説動画へ。メガカウダは保存状態の極めて良い喉の骨を通して、「哺乳類の近縁グループはいつ、ちゃんと食事ができるようになったのか」という大きな問いを、硬派でありながらイメージしやすい形で語ってくれる。
