運動を習慣にしたいのに、いつも三日坊主で終わってしまう? 英ラフバラー大学(Loughborough University)の新しい研究が、とてもシンプルなヒントをくれた。走る場所を変えてみることだ。研究によると、同じ30分間、同じくらいの疲労感で走っても、被験者は街中より森の中のほうが遠くまで走り、走り終えた後の気分も良く、次もまた走りたいと感じていた。

研究を主導したのはラフバラー大学スポーツ・運動・健康科学部の博士課程の学生マシュー・パットランド氏で、ダニー・ロングマン博士とスイス・チューリッヒ大学のコリン・ショー博士が指導した。論文は学術誌『Evolution, Medicine, and Public Health』に掲載され、大学が10月5日にプレスリリースを出した。研究には健康な成人47人(うち女性16人)が参加し、それぞれ森と都市の環境で周回コースを自分のペースで30分間走り、同じ主観的運動強度(10段階中4)を保った。
心拍数はほぼ同じ、なのに距離は長い
結果、被験者は森の中のほうが都市よりも明らかに長い距離を走ったが、心拍数と主観的運動強度は都市とほぼ同じだった。論文要旨の統計によると、距離の差は小幅なものだったが、大きく差がついたのは感じ方だ。森で走る楽しさ、走り終えた後の気分、そして「この先もまた運動したい」という意欲は、いずれも都市より有意に高かった。
パットランド氏は「自然の中で運動した参加者は、近いうちに同じ運動をまたやりたい、そしてこの先12か月続けたいと答える傾向が強かった。継続する意欲こそ、長く活動的でいるための鍵なので、これは重要だ」と話す。研究チームは、運動習慣が続かないことはそもそも公衆衛生上の大きな課題であり、自然の中でたった1回運動するだけで、将来の運動への意欲が大きく高まると指摘している。
「環境のミスマッチ」 体はまだ都市に適応していない
ロングマン博士によると、この研究の理論的な土台は、チームが提唱する「環境ミスマッチ仮説」(Environmental Mismatch Hypothesis)だ。工業化によって人間が暮らす環境と、自然環境の中で進化してきた生理機能との間にずれが生じているという考え方である。工業化した環境は2つの経路で私たちに影響を及ぼしうるという。ひとつは、汚染、人工の光、騒音、交通といった、体がまだあまり適応していない新しい負荷にさらされること。もうひとつは、微生物の多様性、植物が放つフィトンチッド、自然な昼夜の明暗サイクル、鳥のさえずりといった感覚的な体験など、自然と触れ合う機会が減ることだ。
ロングマン博士は、参加者が自然の中でより遠くまで走ったのに心拍数や主観的運動強度は上がらず、しかもより楽しく意欲的だったことは、森の環境が体に求める負担が少なく、同時にパフォーマンスに必要なリソースを与えていることを示していると説明する。パットランド氏の結論は明快だ。「運動習慣と運動の楽しさを高める最も簡単で安上がりな方法は、自然の中で運動することだ」。都会暮らしの人は、次のジョギングでルートを公園や近くの山の遊歩道に変えてみてはどうだろう。
出典:Loughborough University プレスリリース(2026/10/5)、Evolution, Medicine, and Public Health 論文
