音楽フェスといえば、耳をつんざく音響とぎゅうぎゅう詰めのステージを思い浮かべるかもしれない。ところがフィンランドの小さな町ピュフター(Pyhtää)はその逆を行き、10月10日、世界初をうたう「自然を聴く音楽フェス」Hiljaa Fest(フィンランド語で「静かなフェス」の意)を開催する。ステージに立つスターは歌手ではなく、クロライチョウや風、ミズゴケ。主催者はユーモアを込めて、米カリフォルニアの有名フェス「コーチェラ」にかけて「Quietchella(クワイエッチェラ)」と呼んでいる。

画像出典:Visit Kotka-Hamina
13組の「大自然スター」が4つのステージに
会場は首都ヘルシンキから東へ車で約90分のヴァルクムーサ国立公園(Valkmusa National Park)。フィンランド南部では珍しい天然の湿原で、40種類もの湿地環境があり、手つかずの景観から地元では「南フィンランドのラップランド」と呼ばれている。園内には木道や休憩所、展望塔があり、ハイキング経験がない人でも歩ける。
公式の紹介によると、今回は13組の「自然のパフォーマー」が4つのステージに登場する。入口に最も近い「Räme」ステージでは、香り高いイソツツジと風にねじ曲げられたマツがトップバッターを務める。開けた湿原の中心にあるメインステージ「Neva」では、ミズゴケ、モウセンゴケ、クラウドベリー、クランベリー、朝霧、そして風の香りが楽しめる。高台の「Simonsaari」ステージはバードウォッチング向きで、クロライチョウやクロヅル、コモチカナヘビに出会えるかもしれない。「Moronvuori」ステージには会場随一の絶景の崖がある。公式が一押しする最大のスターは、国立公園を代表する種で、フィンランドで最も希少なガのひとつ Idaea muricata。ただし公式いわく、スターは気まぐれで、まったく登場しないこともあれば、突然サプライズで姿を現すこともあるという。
旅行系動画クリエイターのINDIVUEは、Visit Kotka-Haminaの招待でヴァルクムーサ国立公園を訪れ、Hiljaa Festの湿原の風景を撮影している。
動画出典:INDIVUE/YouTube
入場無料、10月末まで開催
10月10日のオープニングは招待客のみの参加だが、その後はセルフガイド形式となり、誰でも無料で入園して、自分のペースで遊歩道を歩きながらこれらの「演奏」を聴くことができる。イベントは10月末まで続く。主催者は、会場エリアは木道や森の小道を歩く必要があり、現時点では移動補助具が必要な人には適していないと注意を呼びかけている。また、全員がフィンランドのアウトドアのルールを守り、自然を尊重して痕跡を残さないよう求めている。
フェスのクリエイティブディレクターで原野ガイドのシモ・ペリ氏は「ヴァルクムーサの美しさは小さなディテールに宿っている。風のささやき、コケのかすかなざわめき、そしてあなたのために歌う鳥たち」と語る。ピュフター町のテルヒ・リンドホルム町長は、自分たちだけの小さな「Quietchella」が、立ち止まって静けさを味わうきっかけになってほしいと話している。
出典:Visit Kotka-Hamina(2026/9/15)、Travel Tomorrow(2026/10/7)、Presseportal/Visit Finland(2026/9/17)
