推定194歳、現存する世界最高齢の陸上動物とされるアルダブラゾウガメ「ジョナサン」(Jonathan)が、またもや科学ニュースに登場した。研究チームが遺伝子とエピジェネティクス(後成的遺伝)を解析したところ、老化に関わる経路に関連する独自の遺伝子変異が287個も見つかった。しかもDNA修復とエネルギー代謝を制御するエピジェネティックな「スイッチ」は、いまも若い個体のように見えるという。長寿の話題が好きな人にとって、セントヘレナ島で1世紀半近く「勤務」を続けるこのスターガメは、まさに「超ロングバッテリー」の実演者だ。

画像出典:St Helena Government, Communications Hub(via Popular Science)
ジョナサンは1832年ごろにふ化したと推定され、1882年にセーシェルから南大西洋の英国海外領土セントヘレナ島へ贈り物として送られた。現在も総督公邸「プランテーション・ハウス」(Plantation House)で暮らしている。『Science Advances』に発表されたこの研究にはケンブリッジ大学やKallel Foundationなどが参加し、関連報道ではジャスティン・ゲルラッハ氏やスティーブン・クラーク氏らの名前も挙がっている。Popular Science、ケンブリッジ大学、Live Scienceが2026年10月上旬に相次いでこの成果を紹介した。
287の変異はDNA修復、炎症、がん抑制の経路に集中
研究によると、これらの独自の変異は、DNA修復、炎症の抑制、インスリン調節、がん抑制といった老化関連の経路に関わっている。チームは記録上初となる巨大ガメのエピジェネティクス解析も実施。DNA修復と代謝を担う「スイッチ」の状態は、意外にも若いアルダブラゾウガメにかなり近く、一般にイメージされる「百歳を超えた老ガメ」の徹底的な老化とは違っていた。つまりジョナサンは長生きなだけでなく、分子レベルの「メンテナンス状態」も驚くほど安定しているのだ。
このスターガメを守るため、チームは採血ではなく頬の粘膜をこすり取る方法でサンプルを採取し、感染のリスクを避けた。サンプルは、より若いアルダブラゾウガメ「タンク」や、すでに死んだガラパゴスゾウガメ「ロンサム・ジョージ」(Lonesome George)とも比較され、さまざまな巨大ガメから長寿の手がかりをつなぎ合わせようとしている。もちろん人間がすぐにカメの寿命をまねできるわけではない。それでもジョナサンは生きた「超長寿動物の取扱説明書」となり、老化生物学に絵になる研究対象をもたらした。
英国の通信社SWNSも短い動画を制作しており、ジョナサン本人の姿と、287個の長寿関連遺伝子変異に関する研究のポイントを紹介している。
動画出典:SWNS/YouTube
百歳超えのカメがまだ「現役」? エピジェネティクスは若者並み
一般の人にとって一番ピンとくるのは、遺伝子に老化に抗う手がかりがあるだけでなく、エピジェネティクスのレベルでも「若作り」している、という点だろう。セントヘレナ島の住民にとってジョナサンはとっくに生きたランドマークだったが、今回、科学者が遺伝子とエピジェネティクスでその物語を論文にしたことで、このニュースは「かわいい」と「ガチ科学」の両方で楽しめるものになった。今度誰かに「どうしてカメはそんなに長生きなの?」と聞かれたら、笑ってこう答えればいい。答えはきっと、あの287個の変異と、まだ「若い」修復スイッチの中に隠れている、と。
