『アダムス・ファミリー』を観たことがある人なら、ひとりでに這い回るあの「手首」を覚えているはずだ。スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)のソフトロボティクス研究室が、本当に「歩くロボットハンド」を作ってしまった。車輪も追加の脚もなく、5本の指を脚代わりにしてつま先立ちならぬ「指先立ち」で這い回り、転んでも自分で起き上がる。さらにキーボードを押してパソコンゲームまでできるという。米『ポピュラー・サイエンス』(Popular Science)は10月2日、「未来版アダムス・ファミリーの手首のよう」と題してこの研究を紹介した。

画像出典:Soft Robotics Lab/ETH Zurich
市販のロボットハンドにバッテリーとPCを搭載 強化学習で「歩行」を習得
研究チームのプロジェクトページと『ポピュラー・サイエンス』によると、チームが使ったのは本来ヒューマノイドロボット用に設計された市販のロボットハンドで、指は5本、可動関節は20か所。ここにバッテリー、センサー、小型コンピューターを取り付け、全体の重さは約1.8ポンド(約0.8キロ)。ケーブルなしで自律的に動ける。
難しいのは、人間の手の指は長さがばらばらで、位置の特殊な親指もあり、もともと歩くようにはできていないことだ。しかも指を1本持ち上げるたびに、残りの指で手全体の重さを支えなければならない。チームはコンピューターシミュレーション上で4,096の仮想環境を同時に走らせ、強化学習によって試行錯誤を重ねながらバランスと移動を身につけさせた。実地テストでは、カーペット、タイル、金属グレーチング、アスファルト、人工芝など14種類の地面を這って進み、転倒しても再び指先で立ち上がることができた。
ETHソフトロボティクス研究室が公式YouTubeチャンネルで公開した動画では、指先立ちで這い回る様子が見られる。
動画出典:Soft Robotics Lab/ETH Zurich(YouTube)
32回のキー入力で29回命中 「倉庫番」もプレイ
このロボットハンドは歩くだけではない。一部の指で体を支えながら、ほかの指で小さなブロックを押したり、キーボードを押したりもできる。『ポピュラー・サイエンス』によると、テストでは32回キーを押して29回正しく命中。操作者の指示どおりに矢印キーを押して、パズルゲーム「倉庫番」をプレイすることもでき、しかもキー入力に視覚フィードバックは必要ないという。
これは単なる不気味なハロウィーングッズではない。『ポピュラー・サイエンス』は、将来ヒューマノイドロボットが入り込めない狭い場所に出くわしたとき、手を「取り外して」這わせ、物を取ってこさせることもできるかもしれないと想像する。研究チームは論文で、ロボットハンドに独自の移動能力を持たせることで、将来のロボットが人間のために作られた空間やインターフェースの中でより柔軟に動けるようになると述べている。この論文は現時点では査読前のプレプリントで、著者はETHのアミールホセイン・カゼミプール氏、ヘフイ・ジェン氏、ロバート・カッチュマン氏。
