オーストラリア人は道端に巨大なモニュメントを建てるのが大好きだ。「ビッグ・バナナ」「ビッグ・パイナップル」「ビッグ・ロブスター」などは有名なドライブスポットになっている。そして今、ニューサウスウェールズ州北部の人口約5,500人の町ナラブライ(Narrabri)もこの仲間入りを目指している。主役は、世界でこの地域にしかいない蛍光ピンクのナメクジだ。

画像出典:ruth-palsson(iNaturalist)/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
森林火災で絶滅したと思われたことも
この「カプタ山ピンクナメクジ」は絶滅危惧種で、ナラブライの東約50キロにあるカプタ山国立公園の、標高の高い亜高山帯の森にしか生息していない。カプタ山は死火山で、周囲の平原より1,500メートル以上高い。このナメクジは体長20センチにもなり、全身が目の覚めるような蛍光ピンク。しかも湿って霧が出る天気のときにしか姿を見せないため、めったにお目にかかれない。
シドニー・モーニング・ヘラルド紙によると、2019〜2020年にオーストラリアを襲った「ブラック・サマー」の森林火災が生息地にまで及び、その後何年も観察記録がなかったことから、一時は絶滅が心配された。その後、ニューサウスウェールズ州国立公園野生生物局の調査で、山頂付近の点在する岩壁に小さな個体群が生き残っていることが確認され、市民が目撃情報を報告できるスマホアプリ「Slug Sleuth」も公開された。ナラブライ郡のダレル・ティーメンス(Darrell Tiemens)郡長は、幸運にも2回見たことがあり、「実際に見てみると、色がどれほど鮮やかで見事かわかる」と話す。ただしパートナーと義母はまだ見たことがないそうだ。
すべては姉妹都市に贈ったシリコン製ナメクジから
このアイデアは、実は600キロ以上離れたシドニーから生まれた。地元メディア『New England Times』によると、ナラブライとシドニーのランドウィック市(Randwick)は姉妹都市で、毎年オーストラリア地方自治体の年次総会で会食している。今年、ナラブライがランドウィックの市議全員に約10センチのシリコン製ピンクナメクジを贈ったところ、議員たちは「子どものように」大はしゃぎ。ランドウィック市議のアレクサンドラ・ラックスフォード氏がその後提案し、ナラブライの補助金や資金獲得を後押しすることが市議会で全会一致で支持された。
ティーメンス郡長は、郡議会の予算は厳しいため地方税は使わず、補助金や協賛金、慈善寄付を募るとし、像の大きさは集まった資金次第で、現時点では全長10〜20メートル、あるいはそれ以上を検討していると説明。「われわれは大きな国だ。大きなものが大好きなんだ」と話す一方、安っぽい観光の目玉ではなく、センスのある芸術作品のようにしたいと強調する。ニューウェル・ハイウェイ沿いにあるナラブライを、旅行者が給油やマクドナルドに立ち寄るだけの中継地から、何日も滞在する価値のある目的地に変えたいという。さらに「遺言で巨大ピンクナメクジ記念碑を寄贈したい人がいれば大歓迎だ」と冗談を飛ばした。
オーストラリアの7NEWSも、ナラブライの巨大ピンクナメクジ像計画を短い動画で報じている。
出典:The Sydney Morning Herald(2026/10/6)、New England Times(2026/10/7)、7NEWS(2026/10/7)
