映画『ターミネーター2』のラスト、T-800が溶鉱炉にゆっくりと沈んでいく名シーンを覚えているだろうか。米カリフォルニア州のヒューマノイドロボット企業Figure AIが最近、あの場面を「現実に再現」した。退役したF.02ヒューマノイドロボットたちを訓練し、フィンランドの鋳造工場で自ら溶けた鋼の中へ飛び込ませて溶かしたのだ。そしてこのアイデアを出したのは、ほかでもない、かつてターミネーターを演じたアーノルド・シュワルツェネッガーだった。

画像出典:Figure公式サイト(Figure)
きっかけは、FigureのCEOブレット・アドコック氏がSNSのXで、旧型のF.02ロボットを「華々しく引退」させるアイデアを募集したことだった。これらのロボットが本社の倉庫スペースを占領していたからだ。するとシュワルツェネッガー本人から「溶かしてしまえばいい」との返信が。Figureはその後シュワルツェネッガーに連絡を取り、本人も参加したがっていると知って、計画の準備を始めた。
なぜ普通に分解しないのか
Figureは公式の説明で、F.02は工場への初配備(BMW工場)、AIモデル「Helix」の誕生、初めての家事、初めての物流業務など、会社に数々の「初めて」をもたらしたと振り返る。しかし新世代F.03の機体数が増えるにつれ、F.02の保守を続けるのは割に合わなくなった。ロボットには自社製のアクチュエーターなど知的財産が詰まっているため、独自ハードウェアを保護できる方法で処分する必要があり、1台ずつ分解すれば大量の技術者の手間がかかり、F.04の投入時期まで遅れかねないという。米『デゼレト・ニュース』によると、F.02はBMWのサウスカロライナ州スパータンバーグ工場で試験導入され、累計1,200時間以上稼働し、BMW X3約3万台の生産を手伝った。
引き受けてくれたのは世界でフィンランドの鋳造所ただ1つ
本当の難題は場所探しだった。Figureによると、連絡を取った米国とメキシコの金属鋳造所は、リチウム電池を積んだロボットを高価な設備に飛び込ませることをどこも嫌がり、元『怪しい伝説』(MythBusters)の出演者に助けを求めたこともあった。最終的に世界で唯一引き受けてくれたのが、フィンランド・イマトラ(Imatra)の鋳造所だった。
ロボットが鋼の取鍋に正確に飛び込めるよう、チームはまずカリフォルニア州サンノゼの拠点に大型エアマットを設置し、建物の2階から飛び降りる訓練を実施。スタントマンの動きも参考にしながら、シミュレーション環境で新しいAIモデルを訓練した。鋳造所では、3本の巨大な黒鉛電極が75トンのアーク炉を動かしてスクラップ鋼を溶かす。チームに与えられたのは24時間で6回の溶解のチャンスのみ。毎回約20分で溶けた鋼は冷えて固い殻ができてしまう。Figureによると、撮影機材などの電子機器が高温と電磁場で次々に故障する中でも、ロボットはAIの指令を問題なく実行したという。
Figureが制作した動画では、1台のロボットが映画さながらに鎖でつり下げられてゆっくりと溶けた鋼に沈み、最後に親指を立てる。防火服姿でそばに立つシュワルツェネッガーも同じポーズで応えた。溶かした後の金属の棒はすでに米国へ運ばれ、少数の限定記念品に加工されている。Figureは「AI生成映像が当たり前の時代だからこそはっきり言っておくが、私たちは本当にロボットが自律的にジャンプするよう訓練し、フィンランドまで運び、溶けた鋼の入った取鍋に飛び込ませた」とわざわざ強調している。
出典:Figure公式(2026/9/30)、SYFY(2026/10/6)、Deseret News(2026/10/5)
